プロローグ ーそれは30年ぶりの再会から始まったー
3月のある日、突然、見慣れない相手からメールが届いた。
それはしばらく見なかったけど懐かしく、待ち望んでいた相手。
それは、僕のカート時代の師匠であり恩人でもある、カートショップの店長「加藤さん」からだった。
「昔、一緒にカートをしていた加藤ですが、野村健馬さんですか?」という、どこかよそよそしい文面だった。
それもそのはず。なんと、30年ぶりの連絡なのだ。
僕がカートを辞め、加藤さんがカートショップを辞め、それっきり疎遠になっていた。
その後は消息もわからず、最近になって「加藤さんはどうしてるんだろう」とネットで検索してみたが、手がかりはなかった。
つい先日も、僕の両親が「そういえば、あの加藤さんは今どうしてるのかなぁ」と話題にしていたところだった。
そんな矢先に届いた加藤さんからのメール。
おそらく、僕がInstagramに投稿していたカートの写真を見つけて、連絡をくれたのだろう。
加藤さんもまた、最近になって僕や当時の仲間を探していたのだという。
最初はどこかぎこちないやり取りではあったけれど、久しぶりに会おうということになった。
会ってみれば、30年ぶりとは思えないほど自然に話が弾んだ。
そんななか、加藤さんがふと口にした。
「健馬、写真撮ってるの?」
「今度、那須のイベントに出るんだけど、その時に俺の友人を撮影してくれない?」
──そんな経緯から、加藤さん、そして加藤さんの友人・志村さんの撮影のために、2025年6月8日、つくるまサーキット那須で開催される「ワイルドスラロームチャレンジRd.2」へ足を運ぶことになった。
当初はカップレに掲載する予定も、レポートを書くつもりもなかったのだけれど、主催者の方に「(コース外の安全なところで)撮影させてもらってもいいですか?」とお伺いすると──
「もちろん。コースにも入っていいですよ。ここなんか安全だし、撮影ポイント多いと思いますよ」と、予想外の神対応。
そんなありがたいご配慮を受けて撮った写真の数々。
志村さん、加藤さん以外の選手たちの姿をお蔵入りにしてしまうのは、なんだかもったいなく感じた。
イベントを体感して、その魅力を伝えたくもなった。
そこで、失礼を承知で「掲載してもいいですか?」と改めてお願いすると──快くご承諾をいただいた。
寛大なご対応をくださったガレージシロクマさんには、感謝しかない。
そんなわけで今回は、イベントレポートも交えつつ、撮影した写真を掲載させていただく運びとなった。
イベント概要:ワイルドスラロームチャレンジ Rd.2
開催日:2025.06.08(SUN)
開催場所:つくるまサーキット那須 https://sunrise-circuit.jp/index.htm
主催:ガレージシロクマ https://g-shirokuma.com/
イベント情報リンク:http://www.tohge.com/
天気:晴れ
路面:ドライ
コース図:テクニックと度胸が試される特設レイアウト

コースは、常設の「つくるまサーキット」ターマックコースをベースに、パイロンを設けた特設ステージ。
詳細なレイアウトはイベント直前に発表されるため、ドライバーたちはぶっつけ本番で走行することとなり、普段の実力がそのまま試される形式だ。
当初は360°ターンが最大の難所かと思われたが、実際には、ストレート上に設けられた連続する180°ターンが最大の難所となっていた。
広いストレートとはいえターンするには狭く「果たして曲がり切れるのか?」という心理的プレッシャーがかかる中で、サイドブレーキを引けるか、アクセルを踏み込めるか -まさに度胸とテクニックの見せ所である。
中には、ターンを曲がりきれずバックギアで切り返す車両も散見された。
一方見事なターンを披露する車両もあり、華麗なテクニックに惚れ惚れ。
そんな明暗がはっきりわかるのがこのステージの醍醐味のひとつ。
「うまくできなくても恥ずかしくなさそうだな。でも――――上手くできたら爽快だろうなぁ」。
観ているうちに、自然と自分も挑戦してみたくなった。








当日のタイムスケジュールと走行形式
当日のタイムスケジュールは下記の通り

午前には練習走行が2枠設けられている。
タイスケの記述だけだと「練習走行は2本なのかな?」と思っていたがさにあらず。
ゼッケン順にNo.1(A)、No.2(B)、No.3(C)……といった形でグループ分けされ、練習走行中は参加クラスに関係なく、このグループごとに出走する形式となっている。
走行枠内で1台ずつコースインしてアタックし、ゴール後は再び列に並び、順番が来たら再度コースに出るというシステムだ。
参加台数にもよるが、今回の様子を見る限りでは1回30分の走行枠で3~4回のアタックが可能
それが2枠分あるため、合計で6〜8回は走ることができ、想像以上にしっかりと練習ができる構成になっている。
ただ練習走行中はタイム計測はなし。
「車とコースに慣れる」ことはできるが、「走り方を変えてタイムを比較する」には自分達でタイム計測しないといけないのでそこは注意が必要だ。
午後からはいよいよ本番のタイムアタック!
午前のようなグループ分けはなくなり、ゼッケン順に1台ずつ出走する。
全車が1本目のアタックを終えた後、15分のインターバルを挟んで2本目、さらに同様の流れで3本目が行われる。
全3本のアタックのうち、ベストタイムによって最終順位が決定する。
1本目で好タイムを出してライバルにプレッシャーをかける選手もいれば、1本目・2本目での試行錯誤を踏まえて、3本目でまとめにかかる選手もいるなど、駆け引きも見どころのひとつだ。
各クラスのバトルハイライト
ビギナークラス
優勝はスイフトの本田選手。
1本目で1’07 “933を叩き出した。
2本目以降、タイムを更新することは出来なかったがライバルに抜かれることもなくそのまま優勝となった。

見事優勝を飾った本田選手とスイフト
2位はミラージュの山口選手。
1本目1’11 “272、2本目1’10” 802、3本目1’10 “131と着実にタイムを縮めたが本田選手に届かず。
3位は180SXの大里選手。
3本目に1’09 “818の自己ベストを出したがパイロンタッチで+5秒のペナルティ。
これがなければ2位だっただけに悔やまれるパイロンタッチだった。
のむけんの友人、加藤選手は志村選手のランサーを借り(駆り)ビギナークラスにエントリー。
カートではSL全国大会で優勝、F3のドライバーだった実力者だがそれも昔の話。
「MT車に乗るのは30年ぶり」ということもあり、本人も周りの僕達も期待と不安が入り交じる。
練習ではスピンターンも止まらずにクリアし「表彰台も狙えるか?」と期待が膨らむ。
しかし決勝にむけて交換したハイグリップタイヤでフィーリングが変わってしまいターンが決まらない。
3本目に1’11 “170とタイムをまとめたが表彰台には一歩届かず4位となった。

30年ぶりのMT車、表彰台には届かなかったがさすがの走りを見せた加藤選手とランサー

コンパクトクラス
1本目1’07 “224、2本目1’06” 427、3本目1’06 “566とすべて好タイムをマークしたヤリスの松下選手が優勝。
すべてパイロンタッチなし、そしてどのタイムも他の選手に抜かれることがなかったので圧勝と言える。

まさに圧勝、松下選手とヤリス
2位はNDロードスターの奥本選手がコンスタントな走りで入賞。
同じくNDロードスターの棟方選手が3本目で1’09 “133を出し滑り込みで表彰台に立った

ミドルクラス
1本目、⑰渋谷選手(BRZ)と⑱田中選手(180SX)が1’07 “730の同タイムでトップに立つが、⑲石山選手(スイフトスポーツ)が1’07” 422で逆転。
更に⑳富野選手(GRヤリス)も1’07 “633で②番手に食い込み激しい闘い。
石山選手、富野選手が2本目以降タイムアップ出来なかったのに対して、田中選手は2本目に1’06 “717とおよそ1秒短縮。3本目では更にタイムを縮め1’06 “157を叩き出し優勝。

ミドルクラスで優勝、ビギナークラスでは3位と大活躍の180SX※Wエントリーのため
渋谷選手もタイムを短縮したが3本目1’07 “011がベストで7秒台の壁を破れず、惜しくも2位となった。
3位は1本目にトップタイムを出した石山選手が入った。

レギュラークラス
1 “172と失敗したGRヤリスの野入選手だったが、2本目で1’03” 388、3本目で1’02 “824とタイムを伸ばし見事優勝。
GR86の畑本選手は1本目で1’03 “814とトップタイムをマーク、3本目では更にタイム更新し1’03” 236を出したが、その後走った野入選手に逆転を許し惜しくも2位。
3位には尻上がりにタイムを伸ばし、3本目で1’03 “547を出したGR86の笹島選手が入った。

順位は伸びなかったが、派手な走りで場内を沸かせてくれた志村選手とランサー

エピローグ:観て、感じて、参加したくなる、走りたくなるイベント
予期せぬ加藤さんとの再会から始まり、撮影させていただくことになった今回のイベント。
レース、走行会、ドリフト、ジムカーナ、ダートラ――
いろいろなモータースポーツを知ってはいたけれど、こうした形式のイベント・競技があるのは今回が初めての体験でした。
サーキットでのタイムアタックとジムカーナが融合したようなこの競技。
観ていて楽しいのはもちろん、走ってみてもきっと楽しいだろうなと感じた。
走行会のような気軽さがありつつも、しっかり「競技」の醍醐味も味わえる、そんな魅力を感じました。
正直なところ、ジムカーナには個人的に少し食わず嫌いなところ、苦手意識がありました。
「コースを覚えられる気がしない……」「なんだか教習所みたいで、モータースポーツというより訓練みたい」――
そんな印象を持っていたのも事実です。でも、この競技に取り入れられているパイロンスラロームは、そこまで複雑ではなく、無理なく覚えられる範囲。
サーキットを攻める楽しさも存分に味わえます。走行会よりもう一歩踏み込んで、競技としてモータースポーツを楽しみたい。
そんな刺激を求めるドライバーにとって、これは本当に格好のイベントだと思います。
このイベントでは車両によってクラス分けはありますが、細かな車両規則はほとんどなし。
がっつり改造された車も、完全ノーマル車も参加可能です。
プログラムに「車検」がないのには少し驚きましたが、それもこのイベントの間口の広さを象徴しているのかもしれません。
ライセンスも不要。
ヘルメット、グローブ、4点式シートベルトといった最低限の安全装備さえあれば参加可能です。
(※オープンカーやTバールーフ車はロールバーが必要です)
練習走行中は同乗走行もOKで、エントリーしたドライバーはもちろん、見学者でも受付をすれば同乗が可能。
実際に僕も志村さんの助手席に乗せてもらい、強烈なターンを体感させてもらいました。
あの一瞬で完全に心を掴まれた感覚、忘れられません。
お昼にはケータリングも用意されていて、食事の心配がいらないのも嬉しいポイント。
マシン準備や早起きで手一杯。昼食の心配までは手が回らない。
コンビニで買ってくる、という手もあるがコンビニ飯と言うのもわびしいし、この暑い時期では痛むのも心配。
その点、ケータリングなら出来立てを食べれて、午後の決勝に向けてのパワーチャージも出来るってもんです。
そしてこれは、コース内で撮影していたからこそ気づけたことですが――
パイロン区間を通過するたびに、「今のうまい!」「惜しい!」「うわー、もったいない!」とマーシャルさんたちからリアルな声が飛ぶ。
そんなリアクションを送るマーシャルさんたちの姿が、ただのスタッフではなく“仲間”としてイベントを楽しんでいて、その歓声の中で自分も走りたいと思いました。
そんな雰囲気にすっかり魅了された僕は、途中からはすっかり参加モードに。
「車両規則は?」「ライセンスは?」「エントリーフィーはいくらなの?」と、志村さんに質問攻め。
ちなみにエントリーフィーは16,000円(学生は14,000円)と、走行会とほぼ同じくらい。
・ライセンス未所持・車両はほぼノーマルのZC31Sスイフトスポーツ・金欠の僕でも参加できる……ってことは、次回は僕も出るしかない!
4点式を装着して、なんとかしてエントリーフィーも捻り出さねば(笑)








次回の開催は 8月12日(火)@桶川スポーツランド。
これを読んで「ちょっと気になる」と思ったあなた。
一緒に挑戦してみませんか?
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